サンバダンサーの活動意識・参加体験・ウェルビーイング
サンバダンサーは、自らの活動をどのように捉え、サンバを通じて何を得ているのでしょうか。
SOU AZULでは2026年、パフォーマンス企画に参加したサンバダンサーを対象に、第2回サンビスタ意識調査を実施しました。
今回の調査では、ダンサーとしての自己認識やプロ・セミプロ・アマチュアに対する考え方、出演に対する価値観に加え、企画への参加を通じて得た経験、さらに身体的健康・心理的健康・幸福感など、ウェルビーイングに関わる意識について尋ねました。
有効回答は23名です。
今回の回答者には、現在もショーやパフォーマンスへの出演に関心を持ち、新しい舞台経験や学び、人とのつながりを求めるダンサーが多く含まれています。
また、企画の趣旨に共感し、自ら参加を選択した人を対象としているため、本調査は日本のサンバダンサー全体を代表するものではありません。
こうした対象者の特性を踏まえ、今回の結果を
PART 1|サンバダンサーとしての意識
PART 2|参加体験から得られた価値
PART 3|サンバ実践とウェルビーイング
の3つの視点から整理します。
調査概要
- 調査年:2026年
- 有効回答数:23名
- 対象:サンバのパフォーマンス企画に参加したダンサー
- 調査方法:オンラインアンケート
主な調査項目は以下です。
- ダンサーとしての自己認識
- プロ・セミプロ・アマチュアに対する考え方
- 出演に対する価値観
- 参加満足度
- 再参加意向
- チャレンジ度
- 参加を通じて得たこと
- 主観的な身体的健康
- 主観的な心理的健康
- 主観的幸福感
- サンバを始めてから感じた変化
- サンバを踊る際に大切にしていること
PART 1|サンバダンサーとしての意識
1.「プロかアマチュアか」だけでは捉えられない
自身がサンバダンサーとしてどのカテゴリーに当てはまると思うかを尋ねたところ、
- プロダンサー:2名(8.7%)
- セミプロダンサー:12名(52.2%)
- アマチュアダンサー:5名(21.7%)
となりました。
そのほか4名からは、
- プロとセミプロの中間
- セミプロとアマチュアの間
- 本業は別にあるが、サンバの仕事ではプロ意識を持って取り組んでいる
など、単純な3分類には収まらない回答が得られています。
今回もっとも多かったのは「セミプロダンサー」でした。
一方で自由記述を見ると、活動の位置づけはさらに複雑です。
本業を別に持ちながらサンバの仕事にも責任を持って取り組む人、パフォーマンス活動を続けながら自ら学びの場にも参加する人、これまでの経験を次世代に伝えたいと考える人など、多様な関わり方が見られました。
サンバダンサーの活動は、「プロ/アマチュア」という二分だけでは捉えにくい、連続的なものである可能性があります。
2.「プロ」を決めるのは、報酬だけではない
プロ・セミプロ・アマチュアの違いについて自由記述で尋ねると、大きく4つの要素が現れました。
経済的側面
- 継続的に仕事として成立している
- 出演によって収入を得ている
- サンバが生活の一部、あるいは収入源になっている
技術・表現
- 高い技術を持っている
- 観客を惹きつけられる
- 場に応じた表現ができる
- 臨機応変に対応できる
責任
- 依頼者の目的を理解する
- 本番に責任を持つ
- 期待に応える
- 次の依頼につながるパフォーマンスをする
準備・自己管理
- 練習を続ける
- 身体を管理する
- 衣装や見せ方を整える
- 自己研鑽を続ける
回答者にとって「プロ」は、単に出演料を受け取るかどうかだけではなく、技術・責任・準備・価値提供を含む総合的な姿勢として捉えられていました。
3.出演の価値は「本番時間」だけでは決まらない
出演に対する適正な金額感を尋ねると、具体的な金額だけでなく、
- リハーサル
- 事前練習
- 衣装
- 交通
- 拘束時間
- 技術
- 出演によって得られる経験
など、さまざまな要素を含めて判断する回答が見られました。
個人の出演料として数値化できる回答では、1万円前後を挙げる人が比較的多く見られました。
一方で、条件によって異なるため一律に決めることは難しいという回答もあります。
これは、出演が単純な「踊った時間」に対する対価としてではなく、準備・専門性・経験・機会を含む活動全体の価値として認識されていることを示しています。
4.「学ぶ」「出演する」「仕事にする」は連続している
第1回サンビスタ意識調査では、サンバコングレスジャパンの参加者・関係者を中心に、国内のエスコーラ等で活動するサンビスタにも回答を依頼しました。
そこには、自ら費用を負担してブラジル人講師から学ぶ機会を求める若手層や、有償出演経験を持ちながらも技術向上のために参加する人が含まれていました。
第2回では、現在もパフォーマンスへの出演や新しい活動機会に関心を持つダンサーが多く回答しています。
2回の調査から見えてくるのは、
学ぶこと
出演すること
報酬を得ること
新しい経験を得ること
が、必ずしも別々の活動ではないということです。
一人のダンサーの中でも、場面によって「学ぶ人」「出演者」「仕事をする人」という複数の立場が重なっている可能性があります。
PART 2|参加体験から得られた価値
5.参加満足度は高い結果に
参加の満足度は、
1=不満
5=大変満足
とする5段階で尋ねました。
回答は、
- 3:1名
- 4:2名
- 5:20名
となり、**4または5を選択した人は95.7%**でした。
特に「5=大変満足」を選んだ人が20名と、全体の大部分を占めています。
今回の参加者からは、高い満足度が示されました。
ただし、今回の回答者は企画の趣旨に共感し、自ら参加を選択した人たちです。
そのため、この結果は今回の企画参加者の評価として捉える必要があり、他のイベントやサンバダンサー全体へ一般化できるものではありません。
6.次回の参加意向も高い
「次回の機会があれば参加したいですか?」については、
1=参加しない
5=ぜひ参加したい
とする5段階で尋ねました。
回答は、
- 3:1名
- 4:1名
- 5:21名
となりました。
4または5を選択した人は95.7%で、そのうち21名が「5=ぜひ参加したい」と回答しています。
今回の体験が、その場限りで終わるのではなく、次の参加意向にもつながっていることがうかがえます。
7.82.6%が「チャレンジした」と回答
「どれくらいチャレンジをしましたか?」については、
1=チャレンジはとくにしていない
5=とてもチャレンジした
とする5段階で尋ねました。
回答は、
- 2:2名
- 3:2名
- 4:8名
- 5:11名
となり、**4または5を選択した人は82.6%**でした。
自由記述では、
- 普段とは異なる振付
- 新しい身体の使い方
- 異なる世代のダンサーから学ぶ
- 他のチームのダンサーと一緒に踊る
- 大人数で一つの構成をつくる
- 普段とは異なる環境でパフォーマンスする
などが挙げられました。
単に「楽しかった」というだけでなく、普段とは異なる人・動き・環境に触れること自体が、学びや刺激になっていたことがうかがえます。
8.特に多く語られた「人とのつながり」
参加して良かったことについての自由記述では、
- 普段一緒に踊らない人と交流できた
- 他チームのダンサーとつながった
- 世代を越えて一緒に活動できた
- 若いダンサーから刺激を受けた
- 先輩ダンサーと一緒に踊る機会があった
- 同じ目標に向かって練習できた
- 一体感を感じた
といった回答が目立ちました。
ここで注目したいのは、参加者が価値として挙げたものが、舞台やパフォーマンスそのものにとどまっていないことです。
普段は一緒に活動しない人たちと出会い、同じ目的に向かって何かをつくった経験
そのものが、参加体験の重要な一部になっていました。
9.イベントを「その日だけ」で終わらせない価値
今回の企画では、参加者同士の交流や情報発信など、その後の活動にもつながる関係づくりを意識しました。
アンケート結果からも、参加者が新しい仲間、世代間交流、他チームとの接点、新しい学びなどを価値として捉えていることが分かります。
イベントの価値を考える際には、
出演する
↓
経験する
↓
人とつながる
↓
次の活動につながる
という時間的な広がりも考える必要があるのかもしれません。
PART 3|サンバ実践とウェルビーイング
今回、身体的健康・心理的健康・幸福感については、いずれも次の5段階で尋ねました。
- 1=全く思わない
- 2=思わない
- 3=どちらともいえない
- 4=そう思う
- 5=とてもそう思う
質問文はいずれも、
「サンバを踊っていない場合と比べて、現在の方が〜だと思いますか?」
という形式です。
したがって、この結果は本人による主観的な比較評価であり、サンバ開始前後を実測したものではありません。

10.身体的健康|95.7%が「そう思う/とてもそう思う」
「サンバを踊っていない場合と比べて、現在の方が主観的に体は健康だと思いますか?」と尋ねました。
回答は、
- 1=全く思わない:0名
- 2=思わない:0名
- 3=どちらともいえない:1名(4.3%)
- 4=そう思う:8名(34.8%)
- 5=とてもそう思う:14名(60.9%)
でした。
「4=そう思う」「5=とてもそう思う」を合わせると95.7%です。
自由記述でも、
- 体力がついた
- 運動習慣ができた
- 姿勢を意識するようになった
- 筋肉を使うようになった
- 身体づくりを意識するようになった
- 健康的な生活を心がけるようになった
などの変化が語られています。
サンバをフィットネスや身体活動として検討していく上で、興味深い結果です。
ただし、これは本人の主観的評価であり、体力・筋力・身体活動量などを客観的に測定した結果ではありません。
11.心理的健康|87.0%が「そう思う/とてもそう思う」
「サンバを踊っていない場合と比べて、現在の方が主観的にメンタルは健康だと思いますか?」と尋ねました。
回答は、
- 1=全く思わない:0名
- 2=思わない:0名
- 3=どちらともいえない:3名(13.0%)
- 4=そう思う:10名(43.5%)
- 5=とてもそう思う:10名(43.5%)
でした。
「4=そう思う」「5=とてもそう思う」を合わせると87.0%です。
自由記述には、
- 元気になる
- ストレス発散になる
- 自信がついた
- メンタルが強くなった
- モチベーションにつながる
- 前向きになった
などの回答がありました。
一方で、活動の中で他者と比較することや、チーム内で役割を担うことによる心理的負担について触れた回答もあります。
サンバ活動と心理状態の関係を考える際には、肯定的な側面だけではなく、活動環境や人間関係によって生じる負担も含めて検討する必要があります。
12.幸福感|95.7%が「そう思う/とてもそう思う」
「サンバを踊っていない場合と比べて、現在の方が主観的にあなたは幸せだと思いますか?」と尋ねました。
回答は、
- 1=全く思わない:0名
- 2=思わない:0名
- 3=どちらともいえない:1名(4.3%)
- 4=そう思う:11名(47.8%)
- 5=とてもそう思う:11名(47.8%)
でした。
**「4=そう思う」「5=とてもそう思う」を合わせると95.7%**です。
身体的健康・心理的健康・幸福感の3項目では、いずれも肯定的な自己評価が多く見られました。
一方で、この質問は「サンバを踊っていない場合の自分」を現在の本人が想像して比較する形式です。
そのため、
「サンバによって健康になった」
「サンバによって幸福感が高まった」
という因果関係を示すものではありません。
今回得られた結果は、今後より客観的な方法で検証すべき仮説を形成するための基礎資料として捉えています。
BODY・MIND・CONNECTIONという3つの視点
今回の自由記述を整理すると、サンバを始めてから感じた変化は、大きく3つの領域にまたがっています。
BODY|身体的ウェルビーイング
- 身体活動
- 体力
- 姿勢
- 筋力
- 身体づくり
- 健康への意識
MIND|心理的ウェルビーイング
- 幸福感
- 気分
- 自信
- ストレス発散
- モチベーション
- 前向きさ
CONNECTION|共創的ウェルビーイング
- 友人や仲間とのつながり
- 異なる世代との交流
- 一体感
- コミュニケーション
- 他者から受ける刺激
- 共同で何かをつくる経験
サンバは、身体を動かすという個人的な活動であると同時に、音楽やリズムを通じて他者と関わる集団的な実践でもあります。
今回の結果では、特に「人と一緒に行うこと」に関する記述が多く見られました。
「一緒にやること」を今後の研究テーマへ
サンバでは、
- 同じリズムを共有する
- 他者の動きや音を感じる
- 一緒に練習する
- 一つの舞台や場をつくる
- 観客ともその場を共有する
といった共同行為が起こります。
今回の調査でも、こうした経験が、
人とのつながり
刺激
学び
一体感
などとして語られました。
今後は、
一緒に身体を動かすこと
リズムを共有すること
共同で何かをつくること
が、人とのつながりや幸福感にどのように関連するのかを、共創的ウェルビーイングという観点から検討していきます。
第1回・第2回の調査から見えてきたこと
第1回と第2回では、対象者も設問も異なるため、数値を直接比較することはできません。
しかし、2回の調査を通して、サンバ実践者の活動には複数の価値が重なっていることが見えてきました。
学ぶ
上達する
出演する
仕事として責任を持つ
人とつながる
自分自身が楽しむ
身体や心を整える
これらは必ずしも別々のものではありません。
サンバへの関わり方を「趣味か仕事か」という一つの軸だけで捉えるのではなく、身体・心理・学習・仕事・社会的つながりが重なった実践として捉える必要があるのではないか。
これが、2回の探索的調査から生まれてきた次の問いです。
今後の研究へ
今後は、サンバ実践とウェルビーイングの関係について、
BODY|身体的ウェルビーイング
身体活動量、フィットネス、体力、身体機能
MIND|心理的ウェルビーイング
幸福感、気分、動的マインドフルネスなど
CONNECTION|共創的ウェルビーイング
つながり、一体感、共同実践、コミュニティ
という3つの視点から検討していきます。
アンケートによる自己評価だけでなく、今後は身体計測や心理尺度なども取り入れながら、実践と調査を研究へつなげていきます。
本調査を読む上での注意点
本調査は、特定のパフォーマンス企画に参加した23名を対象とした探索的調査です。
回答者は、企画の趣旨に共感し、自ら参加を選択した人であり、パフォーマンス活動や新しい経験、人との交流などに比較的前向きな層が含まれている可能性があります。
そのため、ダンサーとしての自己認識、参加満足度、再参加意向などを、日本のサンバダンサー全体へ一般化することはできません。
また、身体的健康・心理的健康・幸福感については自己報告による主観的評価であり、サンバ実践との因果関係を示すものではありません。
本調査は、今後の研究課題や仮説を形成するための基礎的な探索調査として位置づけています。
