継続的に活動するサンビスタの実態と意識
SOU AZULでは、日本で活動するサンビスタが、どのようにサンバを続け、何に魅力を感じ、どのような課題を抱えているのかを把握するため、2025年に第1回サンビスタ意識調査を実施しました。
本調査では、サンバコングレスジャパンの参加者・関係者を中心に、国内のエスコーラ・ジ・サンバ等で活動する人にも協力を依頼し、ダンサーだけでなく、バテリア、アーラ、マランドロなど、さまざまな役割でサンバに関わる90名から回答を得ました。
サンバ歴、練習頻度、活動費、有償出演、スキルアップ上の課題、指導者に求めること、サンバの魅力や普及意識などを通して、継続的にサンバ活動に関わる人々の実態と意識を探索的に整理しています。
なお、本調査は日本のサンビスタ全体を代表する統計ではなく、今後の継続調査や研究につながる基礎資料として位置づけています。
調査概要
- 調査時期:2025年
- 有効回答数:90名
- 調査方法:オンラインアンケート
- 対象:サンバコングレスジャパンの参加者・関係者を中心に、国内のエスコーラ・ジ・サンバ等で活動するサンビスタ
- 対象パート:パシスタ、バテリア、アーラ、マランドロなど
- 主な調査内容:サンバ歴、練習頻度、活動費、所属、出演経験、有償出演、スキルアップ上の課題、指導者に求めること、サンバの魅力、普及への意識など
1.回答者の8割がサンバ歴7年以上
まず特徴的だったのが、回答者のサンバ歴です。


- 1年未満:4名(4.4%)
- 1〜3年:8名(8.9%)
- 4〜6年:6名(6.7%)
- 7年以上:72名(80.0%)
回答者の8割が7年以上の経験を持っていました。
今回の調査は、サンバを始めたばかりの人よりも、長期間継続して活動しているサンビスタの意識を強く反映した調査といえます。
また、76.7%が何らかのサンバチームに所属していました。
サンバは、一時的な趣味やイベント参加というよりも、一定の層にとっては長期間継続する文化活動になっていることがうかがえます。
2.ダンサーだけではなく、バテリアなど多様な役割で活動
回答者が担当しているパートは複数回答で、

- パシスタ:52名(57.8%)
- バテリア:26名(28.9%)
- アーラ:13名(14.4%)
- マランドロ:6名(6.7%)
- その他:16名
となりました。
サンバというとダンサーが注目されやすい一方で、実際のサンバ活動は、バテリアによる演奏やアーラなど複数の役割によって構成されています。
そのため、「サンバのスキルアップ」や「サンバの魅力」について考える際にも、身体表現だけでなく、音楽、リズム、集団での演奏、一体感など複数の側面を考える必要があります。
3.長期経験者の多くが有料イベントへの出演を経験

有料イベントへの出演経験については、
- ある:73名(81.1%)
- ない:17名(18.9%)
となりました。
さらにサンバ歴別に見ると、
| サンバ歴 | 有料出演経験あり |
|---|---|
| 1年未満 | 0.0% |
| 1〜3年 | 37.5% |
| 4〜6年 | 50.0% |
| 7年以上 | 93.1% |
となっています。
特に7年以上活動している回答者では、9割以上が有料イベントへの出演を経験していました。
ただし、この結果から「長く続ければ有償出演につながる」と因果関係を判断することはできません。
今回の回答者には、サンバコングレスジャパンへの参加・関与者など、サンバへの関与度が比較的高い人が多く含まれていることにも注意が必要です。
4.有料出演経験は多いが、「サンバで生計を立てたい」は少数
一方で、「サンバを収入源にしたいか」という問いでは、
- サンバで生計を立てたい:5名(5.6%)
- 一部収入源にしたい:28名(31.1%)
- いいえ:57名(63.3%)
となりました。
有料イベントへの出演経験者は81.1%いるにもかかわらず、サンバだけで生計を立てたいと考えている人は5.6%にとどまっています。
この結果からは、
報酬を受け取って出演することと、サンバを職業にすることは、必ずしも同じものとして捉えられていない
可能性が考えられます。
日本のサンバ活動には、趣味、文化活動、コミュニティ活動、有償パフォーマンスが重なり合う領域が存在しているのかもしれません。
この「趣味と仕事の間」の意識については、今後さらに調査していきたいテーマです。
5.サンバ活動には継続的な費用もかかっている

月のサンバ関連費用については、
- 0円:8名(8.9%)
- 5,000円まで:39名(43.3%)
- 10,000円まで:21名(23.3%)
- 20,000円まで:16名(17.8%)
- 20,000円以上:6名(6.7%)
でした。
半数近くが月5,000円を超える費用をサンバ活動に使っています。
サンバにはレッスン代だけでなく、衣装、楽器、交通費、イベント参加費などさまざまな費用が発生します。
今後は、活動頻度や出演数、有料出演経験との関連を見ることで、サンバを継続するための経済的な構造についても検討する余地があります。
6.指導者には「技術」だけでなく「文化理解」も求められている

「指導者に求めること」では、
- 技術力:65名(72.2%)
- ブラジル文化への理解:55名(61.1%)
- 明るさ:41名(45.6%)
- フィードバック:37名(41.1%)
- 料金:26名(28.9%)
- 厳しさ:15名(16.7%)
という結果になりました。
最も多かったのは技術力ですが、6割を超える回答者が「ブラジル文化への理解」を挙げています。
これは、サンバが単にステップや演奏技術を学ぶものとしてだけではなく、その背景にある文化や歴史を含めて理解したいという意識があることを示唆しています。
また、約4割が「フィードバック」を挙げています。
一方向的に技術を教わるだけではなく、自分の状態や課題を理解し、改善するための具体的な助言を求めている人も多いことがうかがえます。
7.「上達したい」だけでなく、「上達できる環境」が課題
スキルアップで困っていることについての自由記述には、
- ステップや身体の使い方
- リズムや楽器技術
- 練習時間を確保できない
- レッスン時間が生活と合わない
- 練習場所が限られている
- 自分の改善点が分からない
- 年齢や体力への不安
- 指導者や情報へのアクセス
など、さまざまな回答が寄せられました。
特に今回の調査は、サンバコングレスジャパンに参加・関与した人が多いため、スキルアップへの関心が一般的なサンバ参加者より高く表れている可能性があります。
それでも、回答を見ると課題は単純な「技術不足」だけではありません。
学ぶ時間、場所、指導、フィードバック、身体面など、継続的に上達するための環境そのものが課題になっている
ことが見えてきます。
8.ダンサーとバテリアでは、スキルアップの課題も異なる
自由記述を探索的に見ると、ダンスを中心に活動する回答者からは、
- ステップ
- ノペ
- 身体の使い方
- 表現
- 柔軟性
- 体力
- 年齢
など、身体技術に関する回答が多く見られました。
一方、バテリアでは、
- リズム
- 奏法
- 楽器ごとの技術
- 生音
- 集団演奏
など、音楽や演奏技術に関する課題が現れています。
同じ「サンビスタ」であっても、担当する役割によって必要とする学習やサポートは異なります。
今後は、ダンスとバテリアを分けた分析も必要だと考えています。
9.年齢を重ねながら続けるための身体づくりも課題に
今回の回答者は、
- 40代:23名(25.6%)
- 50代:39名(43.3%)
- 60代以上:10名(11.1%)
と、40代以上が約8割を占めています。
自由記述でも、
- 体力
- 筋力
- 柔軟性
- 足腰
- 可動域
- 加齢
など、身体面に関する課題が見られました。
サンバの学習を考える場合、「もっと上手くなる」という視点だけではなく、
年齢を重ねながら、どのように身体を維持し、長くサンバを楽しむか
という視点も重要です。
これは今後、サンバと身体活動、健康、ウェルビーイングとの関係を考える上でも重要なテーマになると考えています。
10.サンバの魅力として多く語られた「楽しさ」
「サンバの魅力・伝えたいこと」の自由記述では、
- 楽しい
- 元気になる
- 笑顔になる
- 高揚感
- 音楽やリズム
- 仲間との一体感
- 自己表現
- 解放感
- ブラジル文化
- 年齢を問わず楽しめる
といった回答が多く見られました。
サンバの魅力は、単一の要素だけでは説明できません。
身体を動かすこと、音楽、リズム、人とのつながり、文化、自己表現など、複数の要素が重なって体験されている可能性があります。
これは、今後サンバとウェルビーイングとの関係を考える上で重要な示唆の一つです。
11.普及方法として最も多かったのはSNS

「サンバを普及するために効果的だと思う方法」では、
- SNS:67名(74.4%)
- 体験レッスン:47名(52.2%)
- テレビ・メディア:39名(43.3%)
- 企業イベント:31名(34.4%)
- YouTube:30名(33.3%)
- 学校導入:27名(30.0%)
でした。
一方、「サンバを始めたきっかけ」の自由記述では、
- 友人や知人から誘われた
- 浅草サンバカーニバルなどのイベントを見た
- ライブや音楽を通じて知った
- サークルや仲間から関わり始めた
など、実際の人間関係やリアルな体験をきっかけにした回答が目立っています。
ここから、
SNSで知る
→ 実際のサンバを見る
→ 体験する
→ 仲間とつながる
→ 継続する
という複数段階の参加導線が存在する可能性も考えられます。
これは今回の結果から生まれた仮説であり、今後さらに検討する必要があります。
12.サンビスタ同士の情報共有への関心
「サンバに関する情報共有の場があれば参加したいか」という問いでは、
- ぜひ参加したい:23名(25.6%)
- 内容による:59名(65.6%)
- あまり興味がない:8名(8.9%)
でした。
「ぜひ参加したい」と「内容による」を合わせると91.1%となります。
一方、「内容による」という回答が最も多いため、単純に交流の場を用意するだけではなく、
- 技術
- イベント
- 指導情報
- ブラジル文化
- 出演機会
- 他チームとの交流
など、具体的にどのような情報が求められているのかを検討する必要があります。
今回の調査から見えてきたこと
今回の90名への探索的調査から、大きく4つの特徴が見えてきました。
1.長期間サンバを続ける実践者が存在する
回答者の80%がサンバ歴7年以上であり、76.7%がチームに所属していました。
サンバには、長期間継続して参加する層が存在しています。
2.趣味と有償活動が重なっている
81.1%が有料イベント出演を経験している一方で、サンバだけで生計を立てたい人は5.6%でした。
サンバにおける「趣味」「文化活動」「有償活動」「仕事」の境界について、今後さらに検討する必要があります。
3.上達には技術だけでなく環境が関係している
指導、フィードバック、時間、場所、身体面など、スキルアップを支える環境に関する課題が多く見られました。
4.サンバの価値は身体・心理・人・文化にまたがっている
「楽しさ」を中心に、音楽、身体活動、自己表現、一体感、仲間、文化など、複数の価値が自由記述に現れました。
次の調査へ
今回の調査を通じて、新たな問いも生まれました。
- なぜサンバは長期間続けられるのか
- サンバを続けることで、身体や心理にどのような変化を感じるのか
- 仲間とのつながりや一体感は、継続にどのように関係するのか
- サンビスタは「プロ」「セミプロ」「アマチュア」をどのように捉えているのか
- 有償出演と職業意識はどのように関係しているのか
- ダンスとバテリアでは、サンバから得るものに違いがあるのか
こうした問いをもとに、今後はサンバと身体活動、心理、幸福感、社会的つながりなどとの関係について、継続的に調査していきます。
本調査を読む上での注意点
本調査は無作為抽出ではありません。
回答者はサンバコングレスジャパンの参加者・関係者を中心としており、スキルアップやサンバに関する学習、情報収集への関心が比較的高い人が含まれている可能性があります。
また、国内のエスコーラ・ジ・サンバ等で活動する人にも協力を依頼しているため、回答者の活動背景は一様ではありません。
回答者は女性が83.3%、サンバ歴7年以上が80.0%を占めており、年代についても40〜50代が多い構成となっています。
したがって、本調査の結果を日本で活動するすべてのサンビスタへ一般化することはできません。
また、一時点で実施した自己回答式の調査であるため、項目間に関連が見られた場合でも、原因と結果を示すものではありません。
本調査は、今後の調査・研究課題を形成するための探索的な基礎資料として位置づけています。
